4月   2010  

2010.04.29 木.
pm 22:43
ある日の出来事,酒場にて

【海辺の酒】

ある初夏の夜 銀座の酒場
いつもの曜日に、いつもの席で、いつものように一週間分の疲れが見えるその女性。
「もうそろそろ暑くなってきたからモヒートをいただこうかな」
「いや、この辺りではまだ良いミントが手に入らなくて…。申し訳ございません」
「そう…。じゃあ、似たような感じでお願いするわ」
「かしこまりました」
アイスピックの鋭い刃先が氷を細かく砕く。
大きめのタンブラーに絞り込まれるライム半分とクラッシュドアイス。ホワイトラムがその後に続き、
カリブ産のナチュラルシロップ。
元来薬用酒として作られたアロマティック・ビターズ数滴とオレンジ・ビターズを数滴。
鋭く銀色に光るバースプーンが静かに廻る。
溢れんばかりに詰め込まれた細かな氷が、静かに注がれたソーダによりタンブラーに落着き、
手品のようにちりばめられるレモンピール。
「これは?」
「銀座のモヒートでしょうか…。どうぞお試しください」
「あっ、美味しい。何だか海辺の町に行きたくなっちゃった」
「良い季候ですね。特に今頃の海には…」

数年前
季節はずれの暑い日の昼下がりの海辺の町の小さな酒場
賑わいを見せるその店内で上質な麻のジャケットを身に着け、ひとり静かにカウンターに座る男性
「モヒートちょうだい」
「かしこまりました」
タンブラーの底にブラウンシュガーとアロマティック・ビターズ数滴。細かくちぎられたミントの葉。
絞り込まれるライムと大きめのクラッシュドアイス。
そして、ホワイトラムが注がれたタンブラーをソーダが満たす。
ガシャガシャと廻る銀色のバースプーン。
「お待たせいたしました」
「ありがと」とひと口
ひと口ごとにタンブラーに戻されるミントの破片。暑さに負けて水になるクラッシュドアイス。           「うまかった…。けどさ、葉っぱを食ってるみたいだな。うまいミントだから良いけど…。いくら?」
「千円です」
「また来てみるよ。でもさ、忙しいのはわかるけどさ、飲む人の気持ちになって作ってみたら?」

ベンチシートの肌もあらわの女性客
「ここのモヒート美味しいのよ、頼んでみる?」
「マスター!モヒート三つね!」
「はい、ただいま。少々おまちください。あっ、ありがとうございました」
黙って席を立ち、静かに出口に向かう男性とカウンターに残された千円札一枚。

「でさぁー、きゃはははは!」
虚しく響く甲高い笑い声

午前四時
ひとり黙々とアイスピック一本で細かなクラッシュドアイスを作るバーテンダーと
飲まれることのないモヒートがいくつも並ぶカウンター

「大丈夫?」
「あっ、すみません。私が海に行っちゃってたみたいですね。失礼いたしました」
「今日はこれで。いつもありがとう。おやすみなさい。また来週」
「ありがとうございます。お気をつけて。」

午前四時、すっかり硬くなった掌の無数の傷跡を見つめるバーテンダー
傍らには銀座のモヒート。

銀座、鎌倉ある日の出来事
栗岩稔

2010.04.29 木.
pm 22:31
THE CLUB AOYAMA,The CLUBについて

【モヒート】

若葉が目に焼きつく頃

赤いワインを白いワインに変える頃

茶色い酒が透明のものになる頃

発泡性の酒が旨くなる頃

炭酸に弾けるミントが恋しくなる頃

街の緑がきれいな頃に

近頃は、年中飲ませるモヒートを

今だからこその「モヒート」を

2010年5月21日金曜日午後8時 THE CLUB at Brift Hにて

眼に若葉、グラスにミント、初モヒート(字余り)

栗岩稔

2010.04.29 木.
pm 20:55
THE CLUB KAMAKURA,The CLUBについて

【鎌倉の酒番】

もう10年以上も前になるのでしょうか。

鎌倉の地で酒番をさせていただいたのは。

そこで出会った男たち

今でも鮮明に覚えています。

鎌倉にいなければ今はないでしょう、きっと。

最期の酒を作らせていただいた作家

最期の酒を作らせていただいたジャズピアニスト

最期の酒を作らせていただいた鎌倉のおじさん

老いも若きも男も女も、すべてが素晴らしい時間でした。

そして今、月に一度の鎌倉の酒番

一年前の回顧展から始まりましたが、ひとまず幕を下ろします。

でも、また、いつか、どこかでお会いできると思います、きっと。

そのときまで、また失礼いたします。

平成二十二年五月八日土曜日 鎌倉惣菜にて

お目にかかれたら幸いに存じます。

栗岩稔

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2010.04.19 月.
pm 21:36
THE CLUB AOYAMA,The CLUBについて

【ラスティ・ネイル~錆びた釘~】

それは、スコッチウイスキーとドランブイのビルドアップ

英国王室秘伝の薬草酒「ドランブイ」

それを継承したスカイ島の一族とその歴史の舞台

ゲ―ル語で「満足できる酒」という意味をもつ「ドランブイ」

その意味に「心を満たす飲み物」とも

心を満たし、満足できる生き方、していますか?

2010年4月23日金曜日午後8時 THE CLUB at Brift Hにて

「古めかしい物」という俗語とも意味する「ラスティ・ネイル」を

THE CLUB 栗岩稔

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